「Kes」(少年と鷹)

ふとケーブルのチャンネルを回すと、ケン・ローチ監督のイギリス映画(1969年)がこれから始まるところ。監督は役者の本当の感情を忠実に表現する事にこだわり、出演者のほとんどを素人から選んだという解説だけは耳に入り、観ることに。言葉では語れない、なんとも言えない素晴らしい映画でした。炭鉱町に暮らす貧しい家庭環境、父は蒸発、仲の良くない意地の悪い兄、朝6時から新聞配達をしてから学校に行く、体操服も買ってもらえずクラスメイトからはバカにされ教師からもいじめられる。そんな少年がある日森の中で鷹のヒナを見つけ育てる…というような話なのだが、少年と鷹の暖かいふれあい物語なんていうものではない。とても繊細な少年の心の機微を語ることなく映像にしている。「大人は子供に無関心すぎる、だから子供も無関心になるのだ」と最後の方で語る少年、そしてラストはバッサリ。何かを深く考えさせるような映画は、ハリウッドにはないヨーロッパ映画独特のものですね。おススメです。