ヴァイオリン奏者兼指導者の母より、自然とヴァイオリンに触れ合う機会に恵まれていました。音楽会やコンサートなども数多く観に行き、素晴らしい演奏を聴く機会にも恵まれました。振り返って考えてみると、音楽の英才教育を受けてきたというより、のびのびとヴァイオリンやピアノ、音楽そのものを楽しみ、上達していったように思います。
中学生になる頃、将来の道を真剣に考える時期になりました。楽しく習い育ったヴァイオリンを、さらに真剣に学び進めていくか、音楽以外の道を選ぶか・・。私は悩んだ末、大好きなヴァイオリンの道を選びました。時間をかけて基礎から学び直し、とにかく沢山の経験を積みました。
音楽大学へ進学し、本当に良い音の出し方、曲毎の演奏解釈、その演奏解釈を自分の演奏表現にするには?という音楽的探究を深めました。大学卒業後はオランダに留学し、さらに研鑽を積みました。
オランダでのヴァイオリンの先生との出会いは、私にとっては運命的でした。とても奥深い音色、そして何よりも魅力的な音楽表現をする先生に出会え、自分にもどんどんとアイデアが湧き出て、音楽がよりクリアに見えるようになりました。一つの曲を毎日弾いていると昨日は見えなかった音が見えてくる。そして音楽も日々変化していくもので、絶対的に正しいというものもない。ロンドンフィルのコンサートマスターを務めていた先生からは、今の時代が求める演奏方法で演奏しなければ、どんなに美しく演奏したとしても(商業的には)無益な事だという、とても現実的な、ハッとさせられる事も学びました。
オランダはヨーロッパの中でも移民を積極的に受け入れており、実に多種多様な文化が入り混じった国で、様々な文化の違いを肌で感じ生活する中で、人見知りで恥ずかしがりやの性格が一変、誰とでも会話できるようになったばかりか、もともと好奇心旺盛だった私は音楽講習会や、ユースホステルなどで、知らない人たちと、どんな文化の中で育ったのだろうとつたない英語で会話する事を楽しめるようにまでなりました。人は助け合って生きているのだという、人との絆もとても感じました。演奏旅行や、講習会への参加などでオーストリア、ルーマニア、ドイツなど20ヶ国ほどのいろいろな国を旅しましたが、中でも鮮烈な印象の国はイスラエルです。オランダでのヴァイオリンの先生がユダヤ人でもあり先生の奏でる音、音楽が本当に魅力的で、世界で活躍する多くの演奏家もユダヤ人がとても多いことから、とてもユダヤという国に興味があり、日本に完全帰国する前にぜひとも行っておきたかった国なのです。イスラエルでは一泊1000円ほどの6人部屋のユースホステルに泊まり、路上で演奏する弦楽四重奏の音楽に感動したり、そこで知り合った人たちとまた別の町を訪ねたり、一人でエルサレムに乗り込んで肌で異文化を感じたり、危ない目にあったりと様々な経験もしてきました。
ヴァイオリンは、ピアノのように鍵盤を押せばその音階が奏でられるものではなく、自分で音色、音階を創り出す楽器です。そういう意味で、表現の幅は広く、個性がとても出やすい楽器ともいえます。その表現の幅を表情豊かに奏でるには、しっかりとした基礎と良い音楽的個性の2つが大事です。音楽は本来、楽しむもの。一方で、良い演奏のためには厳しい研鑽を積む必要があることも事実です。生徒さまひとりひとりのの成長に合わせてバランス良くレッスンを行うことで、末長くヴァイオリンと向き合ってゆけるようにサポートができたらと願っております。
森悦子ヴァイオリン教室では、今までの経験を活かし、表現豊かなヴァイオリニストを育成して参ります。